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肺ガンの内視鏡治療について



呼吸器外科  柴 光年

呼吸器外科で扱う病気のうちで、現在最も多いもののひとつに肺がんがあります。人口の高齢化に伴い、現在の日本人の死亡原因の第一位は悪性疾患(がん)であり、さらに各主要臓器のがんのなかでがんによる死亡率をみてみますと、男性では1994年に肺がんが胃がんを抜いて第一位となっています。 肺がんは喫煙や大気汚染との関係が深く、アメリカやヨーロッパでは煙草の消費量の減少や大気汚染の改善が進み、これらにより、すでに肺がん罹患の減少効果が出てきています。しかしながら日本では禁煙対策の遅れなどから、いまだ減少傾向は認められず、人口の高齢化を迎えてさらに増加するものと予想されます。 肺がんはがんのなかでも治療成績の悪いことで知られていますが,その理由のひとつに発見された時点ですでに全身に広がっているものが多いことが挙げられます。これは肺という臓器が体の中で血液の流れが非常に豊富であるということにも起因しているようです。すなわち肺がんでは、胃がんや子宮がんなどとは違って,治療により治癒が期待できるような早い段階のがん(早期肺がん)が発見されにくいという特徴があります。一般に、肺がんの治療成績を向上させるためには、治療法の開発や改良ももちろん重要ですが、早期肺がんの段階で発見することが最も有効な方法と考えられています。 早期肺がんを発見するためには市町村の肺がん検診を受診することが最も早道であることはいうまでもありませんが、この他に職場などの人間ドックなども一般的になってきています。今回は肺がん治療に対して最近行なわれている内視鏡手術につき紹介したいと思います。

肺がんは肺の中の病気の進み具合により、四期に分類されています。大掴みには、I期:早期、II期:中間期、III期:局所進行期、IV期:全身進行期、と考えてよいと思います。その内I期やII期の比較的早期の患者さんに対しては外科治療が最も効果が高いとされ、治療を考える上での第1選択となってきました。

従来の肺を切除する呼吸器外科手術のイメージとしては、昭和30年代に盛んに行なわれた肺結核の外科のイメージがまだ強く残っており、肺切除の話をしますと、骨は何本取るのですか?とか、術後は酸素が必要になりますか?といった質問を受けることもままあります。 1990年頃より、ビデオ装置の発達とそれに伴う器具の開発により,内視鏡下手術が消化器外科を中心に推進されるようになって来ました。肺癌の切除においても、10cm内外の小さな開胸創にビデオカメラつき内視鏡(胸腔鏡)を挿入するポートと呼ばれる挿入孔を2-3箇所設けることにより、低侵襲でありながら、20-30cmの開胸創で行なわれていた従来の開胸手術とほぼ同等の手術が可能になり,保険適応も認められるようになってきています。ビデオ装置としては,5~10mmの光学視管に3CCDシステムによるカメラヘッドを付けてズーム機構付きの高解像度のビデオシステムが普及してきています。これらの光学視管は先端の角度により、直視、斜視などさまざまな角度で観察できるものが準備され、さらに、軟性鏡の先端にCCDカメラを付けた電子スコープシステムも出現しています。これらでは先端の角度を90° ~100°彎曲することが可能であり,同一のポートからほぼ胸腔内のすべてを観察できるように工夫されています。内視鏡カメラに捕らえた胸腔内の映像を、手術を担当する医師全員が、複数のモニターを使用し、リアルタイムで同時に観察しながら、手術を進めてゆきます。とくに内視鏡下で肺実質,気管支断端,肺動静脈などを自動的に縫合、閉鎖できる道具が開発されたことも内視鏡手術の普及に大きく貢献しました。その他の各種手術器具でも,胸腔鏡手術の普及とともに開発が進み,内視鏡用のピンセッ ト,はさみ,把持鉗子など最近ではとみに便利な道具が開発されてきています。これらの工夫により,内視鏡下の操作では困難とされてきた気管支周囲や肺動脈の周囲のリンパ節郭清も開胸操作とほぼ変わりのないところまで行うことが可能となってきています。

私たちの施設では1999年より、従来行なってきた自然気胸に加えて、肺がんに対する内視鏡手術を開始しています。 肺癌のうちでも、I期、II期の患者さんに対しては、胸腔鏡下肺葉切除のよい適応として、内視鏡手術を推進していますが、従来の手術に比較して、傷が小さく、また広背筋など胸部の大きな筋肉を殆ど切らないため、術後の痛みの圧倒的な軽減、手術後の早期退院が可能となってきています。 現在、呼吸器外科学会や肺癌学会を中心に、どのようなステージの患者さんを内視鏡手術の適応にすべきかについてのコンセンサスの形成が進んでいますが、今後はさらに低侵襲な、体に優しい治療体系の確立に向けて、この内視鏡手術の役割は一層重要になってくるものと思われます。

(本原稿は“法人会きさらづ”に寄稿したものを一部改編したものです)


 

 

 

 

 

 

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