形成外科(外来16)
診療内容と特徴
当科は先天性の身体外表の形、色の変化を、主に外科的手技を用いて治療する科です。つまり目に見える体の傷や変形、あざなどが形成外科の対象疾患になります。
具体的には顔を中心とした体表面の外傷(骨折)、熱傷、瘢痕(傷あと)やケロイド、口唇裂や多指症などの身体外表の先天奇形、黒・赤・茶あざ(ほくろ、血管腫など)や皮膚腫瘍(紛瘤、脂肪腫)などが挙げられます。また、陥入爪(巻き爪)や腋臭症(わきが)の治療、難治性の潰瘍や褥創の再建を行ったり、顕微鏡下の操作を行うマイクロサージェリーの技術を用いて悪性腫瘍切除後の再建や切断指の再接着などを行なっております。
機能のみならず醜状の改善をはかることにより、患者さんにより質の高い医療を提供できますように努力していきたいと思います。
形成外科とは?
形成外科とは主に外科的手技(メス)を用いて体表面の形や色の異常を治療する科です。整形外科ともよく混同されますが、整形外科が主に骨、関節を扱うのに対し、形成外科は主に皮膚表面などの目に見える部分の病気が主な治療対象です。機能はもちろん見た目も考慮する診療科と考えてください。
主な治療対象疾患
【腫瘍】
主として皮膚・皮下腫瘍を対象とします。ほくろ・しみ、血管腫、粉瘤、脂肪腫などの良性腫瘍や皮膚がんなどの悪性腫瘍を切除し、その後の組織欠損の再建も行います。
その後の傷跡もきれいになるように最善の努力を払います。
【外傷】
体表面のけが、やけどなどの治療を行います。とくにやけどは、受傷してから早めの形成外科的診察と治療が後々の傷跡に直結します。なるべく早い時期に当科を受診しましょう。またすでにできてしまった目立つ傷跡、ケロイドをよりきれいに目立たない状態にするための治療も行っています(手術しない方法、手術する方法どちらもご用意があります)。お心当たりのある方は一度受診してみてください。お手助けができるかもしれません。
一方で形成外科は顔の骨折も専門分野の一つです。鼻骨骨折、頬骨骨折、眼窩底骨折、上下顎骨折などさまざまな骨折の治療を行っています。
【先天性体表異常(先天奇形)】
唇の異常(口唇裂、口蓋裂)、指の異常(多指症、合指症)耳介の異常(副耳、埋没耳、たち耳、小耳症など)、臍ヘルニア(でべそ)など、生まれてきたお子様の体表異常に驚く親御様も多いと思います。これらの体表異常は当科で治療を行うことができます(症例に応じて大学・こども病院紹介もさせていただきます)。
その他扱っている疾患
【眼瞼下垂症】
眼瞼下垂症とは上まぶたが十分に挙がらないため物が見えにくくなる状態のことです。皮膚のたるみのみの場合、まぶたを上げる筋肉・腱膜に問題がある場合、内科的疾患(重症筋無力症など)が背景にある場合など様々な眼瞼下垂に対応しております。眼瞼下垂は基本的には手術をしなければ改善はされず、増悪する疾患です。通常両目の場合は原則局所麻酔で一泊二日入院をおすすめしています。片目のみ、たるんだ皮膚をとるのみの場合は日帰りでも行っています。多くの場合は保険診療です。
【わきが(腋臭症】
わきが(腋臭症) 腋臭症とはわきの下のにおい、「わきが」とも呼ばれています。欧米ではある程度生理現象として認識されていますが、東アジアではにおいや衣服の黄ばみなどに嫌悪感を抱く傾向があり、実際お悩みの方は潜在的に多いのではないかと思います。皮膚にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺(汗を出す器官)がありますが、腋臭の原因となる後者はわきの下、外耳道、まぶたの縁、鼻、乳輪、外陰部などの毛穴に分布し、その汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚表面の細菌の作用で分解され特有のにおいを生むとされています。このアポクリン腺の発達には遺伝的素因、性ホルモンなどが関与するほか、腋毛の量、精神的素因(ストレスや緊張など)もにおいの発生に関係しているようです。 手術治療のよい適応になるのはにおいが強い場合です。時々患者さんはとても悩んでいるにも関わらず、においの程度がごく軽い(ない)場合があります。このような時には手術はお勧めしません。またとにかく汗の量が多くてお困りの方は「多汗症」といい治療も異なります。(こちらに関しても当科ではボトックス注射治療を行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。)
手術はわきの下の皮膚切開からアポクリン腺の分布している層を剪刀(せんとう、外科手術用はさみ)で皮膚の裏側から切除する方法が最もよく行われています。剪刀の代わりに切除用の特殊な器械クアドラカット剪除吸引器を用いる方法(吸引剪除法)もあります。当院では前述2種類の手術方法をにおいの程度、年齢などによって使い分けております。
術後は9割以上の方は大半のにおいが減少します。逆にいえば手術で完全ににおいを取り去るのは困難であり、また若干ですがにおいの後戻りが起こります。これらはアポクリン腺の除去をわきの下の全範囲で完全に行うことが難しいためです。
手術は両側同時に行う場合、入院での治療(1泊2日から)をご案内しています。局所麻酔と全身麻酔の選択が可能です。また、原則的に手術範囲の目安になる、腋毛がしっかり生えている年齢での手術をご案内しています。一度ご相談ください。
【乳房再建】
当科では乳がん術後の失われた乳房の再建も対応しております。ニュースなどにも取り上げられるように、乳がんは比較的若い世代にも発症します。また治療法の進歩により予後も比較的良好ながんの一つとなりました。それゆえがんの治療はもちろんですが、術後における患者さんの生活の質も十分に配慮した治療が求められるようになってきています。また乳腺外科でも同様に経験豊富な外科医のもと治療を安心して受けられるように配慮しております。
診療時間・担当医師のご案内
・現在、日本形成外科学会専門医1名が診療に当たっております。
・新患(急患は除く)は原則 火曜、木曜の受付となります。
水曜は全日手術のため休診です
・外来手術(主に局所麻酔)は月曜日と金曜日の午後、入院手術(主に全身麻酔)は水曜日となっています。
診療スタッフ紹介
氏名 | 高平 得榮 | |
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職名 | 医務局形成外科医長 | |
出身校(卒業年) | 順天堂大学(平成29年) | |
認定資格等 | 日本形成外科学会形成外科専門医 | |
専門分野・研究分野 | 熱傷、難治性潰瘍、マイクロサージャリー |
氏名 | 岩瀬 りん子 | |
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職名 | 後期臨床研修医 | |
出身校(卒業年) | 帝京大学(令和3年) | |
認定資格等 | ||
専門分野・研究分野 |
診療実績
令和3年は新患総数707名で、手術件数は484件と新患数は前年比で約5.5%の減少、手術件数は前年比で約3.2%減少しております。
令和3年1月1日~12月31日の症例一覧のグラフを下記に提示いたします。
手術件数は入院手術152件、外来手術332件を合わせて484例となっています。
例年通り良性腫瘍の手術が中心ですが、その他に分類される眼瞼関連(眼瞼下垂、内反症など)の手術が増えています。
2024年6月5日 定期更新実施